精巧な製品を形にする高い技術力と、改善に改善を重ねる探究心によって、世界にその名を轟かせてきた「MADE IN JAPAN」の工業製品。けれどもバブル崩壊後の長いデフレ不況と円高によって、産業は空洞化し、商品企画力にも陰りが見え、閉塞感が否めません。そんな状況を打開するため、共創空間を作り、オープンイノベーションを推進する企業はますます増えています。けれどもその多くは東京など主要都市に開設されたもの。「うちには関係のないこと」と考える地方在住の方も多いのではないでしょうか。
そんな中、北陸・福井に本社を置く化学メーカー日華化学が、世界との共創・協働を進めるためのイノベーションセンターをこの秋開設します。その背景には、顧客が求めるニーズの多様化、製品開発プロセスのスピードアップ化があります。「自前主義の研究開発活動だけではタコ壺化する」という危機感を払拭するだけでなく、イノベーションセンターの開設を契機に、社員の働き方そのものを変えていこうとしています。建設プロジェクトには社員が主体となって参加。ワークショップを多用した手法で、そのアイデアを設計に落とし込んでいきました。
「わざわざ行く」場所に作るイノベーションセンター
古くは和紙や漆器、打刃物など伝統産業からその高い技術力が受け継がれ、現在でも繊維や眼鏡、化学製品など工業が主な地場産業となっている福井。東京からの航空直行便はなく、北陸新幹線もまだ隣県の石川・金沢から延伸されていないため、あまり馴染みがないという人も多いかもしれません。その一方で、一般財団法人日本総合研究所が2016年に発表した「全47都道府県幸福度ランキング」では前回に続く総合第1位に輝き、小・中学生を対象とした全国学力テストや体力テストでは、毎年のようにトップクラス。社長輩出率は35年連続で全国1位になるなど、計り知れぬポテンシャルを秘めた地域でもあります。
そんな福井の県庁所在地、福井市の中心部、福井駅から車で10分ほどのところに本社を構えるのが、各種界面活性剤や化粧品など化学製品の製造・販売を手がける日華化学株式会社です。創業は1941年。福井の主要産業である繊維の加工に使う薬剤や界面活性剤製造によって成長し、現在では中国や韓国、タイ、アメリカなど8カ国12都市に拠点を設けるグローバル企業となっています。
日華化学は2016年に創業75周年を迎えたのを契機に、2017年11月、本社敷地内に「NICCAイノベーションセンター(以下、NIC)」をオープンすることになりました。共創、コラボレーションを目的とする施設にもかかわらず、福井という場所を選んだことには、社内にも異論があったといいます。
海外法人の社長にも『どうせ作るなら国際空港の近くか、もともとある関東の工場内のほうがいいんじゃないか』と言われました。けれども、(江守康昌 代表取締役)社長(執行役員)には、『わざわざ福井に来るからには、何かしっかりとした成果を持ち帰ろうと、みんな真剣に考えることになる。だからこそ、世界と戦えるような新しいものが生み出せるはず。そうして、また福井に来よう、と思ってもらえるような施設にするためにも、創業地である福井でなければならない』という思いがあったんです
そう振り返るのは、日華化学株式会社シニアアドバイザーで、今回のNICプロジェクトリーダーを務める吉田史朗さん。プロジェクト立ち上げ当初は取締役常務執行役員を務めており、日華化学の事業の柱の一つである化粧品事業を立ち上げたメンバーでもあります。
「わざわざ行く」場所に作るイノベーションセンター
古くは和紙や漆器、打刃物など伝統産業からその高い技術力が受け継がれ、現在でも繊維や眼鏡、化学製品など工業が主な地場産業となっている福井。東京からの航空直行便はなく、北陸新幹線もまだ隣県の石川・金沢から延伸されていないため、あまり馴染みがないという人も多いかもしれません。その一方で、一般財団法人日本総合研究所が2016年に発表した「全47都道府県幸福度ランキング」では前回に続く総合第1位に輝き、小・中学生を対象とした全国学力テストや体力テストでは、毎年のようにトップクラス。社長輩出率は35年連続で全国1位になるなど、計り知れぬポテンシャルを秘めた地域でもあります。